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モノを創る価値(R.I.P Alexander McQueen)

最近社内で大幅な人事異動があり波紋を呼んでいるのですが、相変わらず中目黒店勤務の青柳@82キロです。

最近はラーメン/つけ麺絡みの記事が多く(意図的にではありますが)、自分的に主張したい部分はある程度提示出来た感もあるので、今回は最近個人的に思う所が多い分野について真面目に書きたいと思います。



先月初旬、ネットをチェックしていると衝撃的なニュースが舞い込んできました。

それは

「Alexander McQueen is DEAD」

以前にも書いた通り、Alexander McQueenは僕が服飾業界を目指していた10代後半~20代前半にかけて大好きだった尖鋭的アヴァンギャルドモードスタイルのデザイナーの一人。

死因は母親の死にショックを受けたアレキサンダーマックイーン本人による自殺だと言われていますが、懐疑的な見方も多く未だに世界中に波紋を呼んでいます。

マックイーンの魅力はモードの常識的概念をいとも簡単に破壊/独自の理論で再構築するそのデザインセンスですが、モデルのケイト・モスが薬物スキャンダル騒動で苦しんだ時も「We Love You Kate」と書かれたTシャツを着て登場したり、パートナーの男性とイビザで結婚式を挙げる(マックイーンはゲイである事を公的に認めていた)など、過激なプライベートも話題となりました。

享年40歳。あまりにも早すぎる死だと思います。

ただ誤解を恐れずに言うとするならば、自分的には「最後までマックイーンらしい幕の引き方だな」と、改めてアレキサンダーマックイーンという一人の人間の生き方に言葉を失いました。

ご冥福をお祈りします。

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そんな時期にネットを色々と見ていて、ふと目についたアンダーカバーの高橋盾さんの記事で印象的な言葉がありました。

ジャパニズムモードスタイルの重鎮、コムデギャルソンの川久保玲さんのインタヴュー内の言葉なのですが



「(時代が)作る事に対しての価値が重きを置かれていない。ビジネス優先が閉鎖感生む」



という内容で、アパレル業界に限らず現代の世の中の「品質そこそこ、とにかく安く」を追い求めた風潮を危惧した内容が綴られていました。

川久保玲さんは最近

「ジーンズ1本が何百円なんてありえない」
(これは最近流行りの大手カジュアルファッション業界の値段競争に対する批判とも言われています)

という発言で賛否両論多数の物議を醸しましたが、自分的には川久保玲さんのその発言の裏にある意味を汲み取って欲しいな、と思います。

上記の言葉のみ抜粋すると過激に聞こえますが、全文はこうです。

「若い人たちが考えたり作ったりする楽しみや必要性を忘れていくのが心配なのです。
たとえば、ジーンズ1本が何百円なんてありえない。
どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服だけを着ていていいのか。
いい物には人の手も時間も努力も必要だからどうしても高くなる。
いい物は高いという価値観も残っていて欲しいのです。」 


つまり川久保玲さんは、最近の「安さだけを追い求める時代の風潮」によって「若い層の創造性や発想力、モノを創り上げる事への楽しみやクリエイティビティ」が失われるのではないか? と危惧しているのだと、僕は感じます。

服を創るには最低でもまずデザイン(デザイナー)、パターン(パタンナー)、生地と材料、縫製(工場)、流通ルートの確保が必要になります。

当然ですが同じデザイン、同じ型紙で出来るだけ安い生地や材料を使い、少しでも安い(特に海外の)縫製工場で大量に生産すれば1着あたりのコストは下がり、消費者は安く手にする事が出来ます。

勿論これは喜ばしい事なのですが、それだけを評価する世の中になってしまえば、これから服飾業界を夢見る若年層の希望は一体どうなってしまうのでしょうか?



これは飲食業界にも通じると思います。

「大量生産、一括仕入、コスト削減」

の徹底を図れば消費者の負担は小さくなります。

それと同時に、ブームに乗った類似業者/類似商品が市場に大量に出回り始めます。

その弊害として、高い技術を持った個人経営の飲食店などが閉店を余儀なくされる。

その後消費者は飽和状態となった市場に閉塞感を感じ、その結果外食離れが進む。

気付いた時には既に高い技術をもった職人やお店は市場には存在しなくなっていた。

このような業界に、才能溢れる若年層は希望を抱くでしょうか?



…一概には言えませんが、高橋盾さんの言葉を借りるなら

「ビジネスとクリエイションが今最もバランスを取りにくい時代。だからこそピュアな創造が無くてはならないのだと強く思う」

アレキサンダーマックイーンの死を現実としてやっと受け入れた虚無の心に、この言葉は強い共感を伴いながら希望をもたらしてくれました。

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中目黒店 青柳
by mitsuyado | 2010-02-26 22:22 | aoyagi